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Opinion

2020年5月16日(土)

 今月に入り、「検察官の定年延長問題」が注目を集めています。とても大切な問題だと思うのですが、この人生100年時代、定年延長は当然の流れであるはずなのに、いったい何を騒いでいるのかわからず、結果的に無関心にならざるを得ない、という方も少なくないかもしれません。

 そこで、詳細な論点解説は専門家に任せることにして、最低限の問題点提起に加え、法改正の背後に隠された意図を推測しうる事実をわかりやすく提示させて頂きたいと思います。

    最短1分でわかる 検察官の定年延長問題

 検察官は、たとえ政治家相手でも捜査したり逮捕したりできる強力な権限を持っています。

 この権限が十分発揮できるように、従来から、検察官は国家公務員法での定年延長を定めた「第八十一条の三」の適用外とされてきました。

 ところが改正法案では、任命権者である「内閣の権限により」、次長検事や検事長の勤務を延長できるようになります。

 

 そうなると、エリート検察官たちはその地位と引き換えに、内閣、特に首相の言いなりになりかねず、内閣の関係者に不祥事や汚職事件があっても捜査や逮捕は見送られ、闇に葬られてしまうことが危惧されます。

 心配なのは定年延長自体ではなく、内閣による検察への圧力です。

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     プラス3分間で さらに知りたい方へ

     - つじつまが合わない事実の数々 -

 

・そもそもの発端は今年1月。「安倍政権の守護神」と称される黒川弘務検事長の定年延長が閣議決定。

 

・2月3日、森雅子法務大臣は「(検察官にも)一般法の国家公務員法が適用される」として、定年延長は違法ではないと主張。

 

・2月12日、松尾恵美子人事院給与局長は、「検察官に国家公務員法の定年延長は適用されない」とした1981年の政府答弁について「現在まで同じ解釈を続けている」と述べた。

 

→ 3日の森法務大臣の主張と矛盾。どちらが正しいのか?もし松尾局長が正しいとすると、黒川検事長の定年延長は違法。

 

・2月13日、安倍首相は「検察官の勤務(定年)延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と答弁、国家公務員法の解釈変更を表明。

 

→ 12日の松尾局長の答弁と矛盾。しかも、もしそうであれば、森法務大臣の答弁時にその旨説明があるはずではないのか?

・19日、松尾局長は12日の発言につき、「現在まで」の部分を「1月22日に法務省から相談があるまでは」と変更する答弁修正。

 

→ ここまで森氏、松尾氏、安倍氏の説明がしっくりかみ合っていない。普通に考えると松尾氏の12日の答弁が真正であり、違法な閣議決定を合法に見せるために、内閣から松尾氏に虚偽内容に変更するようを求めたのではないかという疑いあり。

 

・法解釈の変更は「口頭で決済した」と森法務大臣が答弁。

 

→「法解釈を見直したのに決裁文書を作らないことは、考えられない」(法務省元幹部)。
 その後の毎日新聞社による文書開示請求では、決裁文書のみならず議事録等も存在しないことが判明。これは意思決定過程の合理的検証を可能にする文書作成を義務付けた、公文書管理法4条に違反(5月13日朝刊)。

 

→ 文書の扱いにかけてはプロ中のプロである法務省が、このような凡ミスを連発するだろうか? もし本当に法解釈を変更したのであれば、基本的な記録である議事録や決裁文書を当然に作成し、残しているはず。

 

→ やはり松尾氏の最初の答弁「現在まで同じ解釈を続けている」が真正であり、13日の安倍首相の「法解釈変更」および19日の森法務大臣の「口頭決済」発言はともに、黒川検事長の定年延長を合法化するための虚偽説明にすぎず、閣議決定前に法解釈を変更した事実はなかったと考えるべき。

 

→ 結論として、黒川検事長の定年延長は違法、そして無効と思われる。

 

 

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 公務員の定年延長を含む改正法案にこのような事実背景があるため、法改正に安倍政権のやましい意図が込められているのではないか、と多くの人が推測。

 ツイッター上でのデモ発言は数百万件にふくれあがり、日弁連会長は2度にわたり反対声明。
https://www.nichibenren.or.jp/.../year/2020/200406.html
https://www.nichibenren.or.jp/.../year/2020/200511.html

 

 さらには元検事総長を含む検察官OBらも、反対する意見書を法務省に提出するという、異例の事態となっています。
 

[ 意見書全文 ]
https://www.asahi.com/articles/ASN5H4RTHN5HUTIL027.html…

 お読み頂きありがとうございました。さて、このような法案を通してよいものでしょうか? いや、それ以前に、このような内閣に、国政を委ねていてよいのでしょうか。お一人お一人に考えて頂けると幸いです。

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